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東京家庭裁判所 昭和42年(家イ)124号 審判 1967年3月09日

申立人 トン・ケイ・エルドク(仮名)

相手方 大田三枝子(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

理由

申立人代理人は、主文同旨の調停を求めたが、申立人は軍務上ベトナム国にあつて当裁判所に出頭することができないため、相手方との間に離婚の合意が成立しない。しかしながら、本件記録添付の諸資料によれば、申立人と相手方は、昭和三七年七月一日東京で婚姻し、その後アメリカ合衆国ノースカロライナ州において家庭生活を営んでいたが、次第に夫婦間に円満を欠くようになり、昭和四〇年一〇月頃から事実上別居し、同年一一月二六日双方の幸福と健康のため別居に関する正式の合意書を作成したうえ別居を続け、相手方は間もなく日本に帰国し、申立人は軍務にあつてベトナムに従軍し、双方別居のまま既に一年以上を経過したのであるが、申立人は相手方に対し別居期間中も引き続き生活費の支払いをする旨約定しながら昭和四一年以降その支払いを全く履行していないことが認められ、尚その他諸般の事情から当事者双方はもはや円満な夫婦関係を期待することは困難であり、その婚姻生活は既に完全に破綻しているものと判断せられる。そして夫である申立人の本国法であるアメリカ合衆国ノースカロライナ州法によれば、一年間の継続した別居(separation)は絶対的離婚原因とされているのであるから、前記認定のごとく、既に一年以上正式の別居生活が認められる本件においては夫である申立人の本国法上離婚の理由が認められ、かつ日本民法によつても前記認定事実を総合すれば離婚相当と考えられる。

そこで、当裁判所は、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情をしんしやくし、職権で審判することとし、家事審判法第二四条、法例第一六条、ノースカロライナ州法、日本民法第七七〇条一項二号に則り、当事者双方を離婚すべく、主文のとおり審判する。

(家事審判官 河野力)

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